毎週web句会第156回(2019/3/31-2019/4/6投句分)

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天の句、その技と心
没のポイント3(おやつリスペクト)
は少なくとも10月末まで休載です。

56名109句 森山文切選 入選32句
駆け巡る選挙カー逃げないカラス まるち
フリーザがこだわり抜いた丁寧語 近江瞬
壊されることを知らない貯金箱 青山祐己
素うどんが流れる渋谷交差点 浅井誠章
駅までがワンメーターの無人島 たにゆめ
腹の空く一食分の朝寝かな 菊池洋勝
気の抜けたビールにテンポ狂い出す 小林祥司
エゴサーチする指 きみに触れる指 朝野陽々
爺ちゃんが熊で婆ちゃんが狸で 平井美智子
フル装備して立ち向かう春の厄 アゲハ
紫のくちびる吸って見えた空 エノモトユミ
地球儀にいくつか嘘が書いてある 羽根
展示前学芸員の椅子沈む 袴田朱夏
換気扇からフェイクニュースが漏れる 糸篠エリー
親切な地図だ紅茶の染みがある 西沢葉火
恍惚の膝を一枚漬けておく
フィクションを嫌う閻魔の誤字脱字 秘まんぢ
多夫婚の位牌に残る片笑くぼ 福村まこと
ばかになる手前で嘘をソートする 芍薬
紙オムツ替える新元号を聞く ヨッシー
無呼吸の駐車券認証装置 岩倉曰
助動詞を拾ってビンゴしてしまう 斎藤秀雄
大げさに褒めたい布団乾燥機 小俵鱚太
傷口に群がる揚羽黒揚羽 toron*
佳5 談合にリズムを添えるジャズピアノ 中村佐貴
佳4 崖に咲く花で作った通知票 甘酢あんかけ
佳3 前奏で終わるひらめのラブソング 斎藤秀雄
佳2 紳士からブンガブンガへ誘われる 斉尾くにこ
佳1 レモンスカッシュを越えて春の肩紐 岩根彰子
開店のお知らせばかり載る雑誌 有村桔梗
事実を言い当てる系の句であるが、事実に気付いた「わたし」の気持ちが感じられる。
ふらんすにあげたいふかふかの帽子 笹川諒
言葉の響きが心地よい。ロシア帽か。おそろしあ。
生命と思えば干からびたパスタ 岩倉曰
もともとカラカラに乾いた「パスタ」に「生命」と「干からびた」を組み合わせたことで、乾く>潤う>干からびるというイメージの流れが生まれた。この流れは「生命」とリンクしており、言葉の選択の妙を感じさせる。

第155回(2019/3/24-2019/3/30投句分)

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天の句、その技と心
没のポイント3(おやつリスペクト)
は少なくとも10月末まで休載です。

60名114句 森山文切選 入選34句
裏声で放送禁止用語言う よーこ
ブラジルへ真っ直ぐ落ちる柿の種 まるち
せんべろで赤くなれない黄レンジャー あまの太郎
天才が戦火で焼いたユーカリ芽 l996
万策が尽きたか空のティッシュ箱 ヨッシー
元号の秘話で弾けるオムライス 福村まこと
冬越さずどこかに消えていくつばめ 雪上牡丹餅
泥靴を干したら忘れられる春 岩倉曰
水を撒く君を見ていて薄くなる 笹川諒
一身に背負いすっぱくなる苺 斎藤秀雄
山吹が咲いた去年の今日は闘病中 岩根彰子
哲学者みたいな顔でアマガエル 柊無扇
永遠がポニーテールの先にある toron*
四季巡り無人駅から伝書鳩 涅槃girl
リビングで愛していたと喋るメモ 夜凪柊
満月が告げる次週のサザエさん 平出奔
法外な値段言葉のレストラン 麦乃
おしゃべりなかぼちゃの種は埋めました 秘まんぢ
復讐に血を滾らせる焼き林檎 霧島絢
ひと匙の恋ですプリンアラモード 藤井智史
鳴き砂のように笑ってみましょうか 尾崎良仁
モドキ、ドキ、鼓動のような足踏みで 棲絵妥ろか
天丼にショパン聴かせる定食屋 甘酢あんかけ
三月の舟に口づけするジュゴン 小俵鱚太
反論を吞み込んだ夜の発光魚 斉尾くにこ
事件現場を中和する桜の木 近江瞬
佳5 洗面所だけを綺麗にする親父 青山祐己
佳4 老いの道袋小路の充電器 武良銀茶
佳3 オレンジの廊下で剥がす肩甲骨
佳2 泣き声を覚えたままのインカメラ 芍薬
佳1 ×印うまく書けない朝帰り 尾渡はち
盗撮の途中の綺麗過ぎた薔薇 中村佐貴
「盗撮」と「薔薇」のイメージのギャップが効いている。「盗撮」の対象でない薔薇が句の主役となったことにより主張が強まった。
始発までフードの紐の非対称 馬鈴
情事の余韻か、逆に何もされなかったのか。始発までの、現実感が失われた空間と時間が表現されている。
悪い木に良い木を接いで飲みにゆく サトシワタナベ
「悪い木」「良い木」がなんともいえない味わい。普通の生活ではあまり使わなさそうな表現なのに親近感がある。「接」はひらがなだと飲みにもかかる(酒をつぐ)が、この句の場合漢字で木を前面に押し出す方が主張が強くなる。ありきたりな「飲みにゆく」の下五で締める「わたし」は”普通の木”か。

第154回(2019/3/17-2019/3/23投句分)

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天の句、その技と心
没のポイント3(おやつリスペクト)
は少なくとも10月末まで休載です。

51名100句 森山文切選
中指を突き立てているカブトムシ 近江瞬
針先の錆びたルアーを贈られた 西鎮
自分だって道具なんだとランドセル 新井昌広
入れ込んだ代数未だ青いまま 浅井誠章
裏側を覗けば目立つ愛の剥げ 糸篠エリー
消印のようにハッキリしない人 ヨッシー
恋文をしたためている花吹雪 多舵洋
継ぎ接ぎの瞼でちがう夢をみる 大橋凜太郎
もう一度きみに拭かれている机 有村桔梗
何一つ残さず飛んだ羽根餃子 あまの太郎
片雲が神のかたちに似る夜明け 涅槃girl
嘘ついているのね溜息が海 岩根彰子
ラブホから歩いて帰る宇宙人 江西レイ
砕くまで木べらか骨かわからない 岩倉曰
席ひとつ空けている人たちの笑み エノモトユミ
えびせんを人が人愛せるあいだ 斎藤秀雄
目を閉じることもできずに浮く金魚 西沢葉火
懲らしめてみたり責めたり裁いたり 斉尾くにこ
モナリザに正視促すカウンセラー 八郎
オリオン座まみれの服で歩きだす 羽根
五線譜に挟み込む夕張メロン toron*
糸こんの混線で降格処分 若枝あらう
佳5 精霊の探す両性更衣室 福村まこと
佳4 契約書名前の欄にいるミミズ 雪上牡丹餅
佳3 ピアニカを捨てたね起動できないよ 笹川諒
佳2 駅ビルの、平面なはずないんだが 御殿山みなみ
佳1 免許証全然笑わない氏名 芍薬
昼下がり磁気の残っている砂場 いゆ蘭
導入の上五は平凡だが、中七下五で想起させる砂鉄が効いている。最近の公園の砂場には砂鉄はないらしい。
ひところの茄子のかたちで昼寝する 袴田朱夏
「ひところ」が良い。茄子の形や色は、「ころ」の音の響きやイメージ、昼寝とリンクがある。
うさぎ寂しがらせ研究者の真顔 中村佐貴
「研究者の真顔」に対する「うさぎ寂しがらせ」が、残酷すぎず、かといって遠すぎず、絶妙な距離感である。

第153回(2019/3/10-2019/3/16投句分)

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60名118句 森山文切選
じいちゃんの真似はダメよと隠す本 遊楽
内臓に効くテトラポッドのポーズ 岩倉曰
核のゴミまだ使えるゾ未知の熱 柊無扇
こむぎこ、と言えば涙はパンになる 朝野陽々
心地良い春風に乗るブーメラン 彦翁
ハンガーに吊るす無遅刻無欠席 藤井智史
キャンドルが似合う人ばかりの会議 笹川諒
薔薇だけが咲いては枯れる停留所 涅槃girl
やましさに蛍光ペンが加担した 近江瞬
おもいでに並走されている未来 宮下倖
婆ちゃんが縁側で聴くデスメタル ペンギンおじさん
新しい方から順に消える影 あまの太郎
暖冬のあおり心がヨーグルト 青砥たかこ
直線はつらいと蛇行して歩く 小林祥司
人生の出口が動くあみだくじ 武良銀茶
湯麺の矜持に引っ張り出された 尾崎良仁
色刷りの魚拓で覆う壁の穴 福村まこと
もどかしく春を待ってるカメレオン 麦乃
アイテムをひとつ残してドアが開く 馬鈴
業績と共に溶けてく雪だるま 雪上牡丹餅
木蓮を一枚脱がす春の指 斉尾くにこ
裏側の湿りで生きる模範囚 l996
はらこ飯ぼくと心中してほしい 江西レイ
扇風機ト音記号に逆戻り toron*
佳5 水筒にペットボトルの茶を詰める 井上雅代
佳4 トラウマを包む風呂上がりのタオル
佳3 服を着てあるけば町はただの町 平出奔
佳2 銀行員のまま太陽に吠えてみる 秘まんぢ
佳1 税務署の裏で飼われるかたつむり 小俵鱚太
残酷な素うどん煮える老夫婦 浅井誠章
評:素は、時に残酷。
もう一度ら抜き言葉で叱ってよ 夏鵜
評:「アンタ何やってんの!?ら抜きなんて考えれんわ!」
週刊誌捨てる検索された道 いゆ蘭
評:ポイ捨てダメ。ゼッタイ。

第152回(2019/3/3-2019/3/9投句分)

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50名95句 森山文切選
海に浮くペットボトルの中はお茶 たにゆめ
スリッパで叩く男も左利き 小俵鱚太
吸殻で確かめているイライラ度 夜凪柊
しつこいほど聞いて忘れている名前 彦翁
天井がグルグル私さようなら 麦乃
例年のしもやけも無く冬が過ぎ 井上雅代
蟻迫るお菓子の家の借地権 秘まんぢ
煎餅を食べるあなたの後を追う 笹川諒
深海魚ごっこしながら上の空 秋鹿町
風船の萎むロコモシンドローム 菊池洋勝
昔話のどれかがパスタだったとさ 御殿山みなみ
去り際が好きで何度も夜を呼ぶ 絵空事廃墟
お雛様お尻が少し浮いている 雪上牡丹餅
ゾーンに入るロバのパン屋が通る サトシワタナベ
途中からですます調になる喧嘩 いゆ蘭
テンキーを乾かしてから水入らず 斎藤秀雄
素うどんのボスは失敗などしない 浅井誠章
白い軽から降りてくる天使たち 甘酢あんかけ
根回しのネバネバ洗っても落ちぬ 糸篠エリー
母親と苗字の違うチューリップ 夏鵜
類想の鎖を断ち切れぬ恋路 若枝あらう
佳5 玉虫色に生きる毒虫の口笛 犬井隆太
佳4 ハンガーを曲げる独りで生きてゆく 芍薬
佳3 廃港を知らずサンゴの呻き声 澤井敏治
佳2 三日月に異議申し立てするチワワ えや実
佳1 水茄子が平和な水になっていく 小川優
啄木の匂いを消した上野駅 八郎
評:15番線ホームの匂い
泣いてみる金魚の尾びれ借りてみる 斉尾くにこ
評:「あ、背びれは間に合ってます。」
シダを踏む裏切り者が濡れている 西沢葉火
評:カリオテ村にもシダは生えていたか。