座談会:川柳とインターネット2

「川柳とインターネット」というテーマで、現代川柳かもめ舎川瀬晶子主宰と、編集委員の杉山昌善氏、近藤良樹氏にお話を伺いました。

日付:平成28年7月20日
場所:藪蕎麦 (そごう横浜店10F)

川瀬晶子
現代川柳かもめ舎主宰
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杉山昌善
現代川柳かもめ舎編集委員
ホームページ

近藤良樹
現代川柳かもめ舎編集委員

聞き手:森山文切
川柳塔おきなわ準備室管理人

1 WEB句会を始めた理由

本日は「川柳とインターネット」というテーマで、WEB句会を運営されているかもめ舎の皆様にお話を伺います。
晶子さんはいち早くネットを取り入れているけど、僕はアナログ人間だからお役に立てるかどうか・・・
ネットをあまりされていないお立場からのご意見もいただけたらと思います。よろしくお願いします。ではまずWEB句会を始められた経緯をお教えください。
もともと私個人の川柳を発信する場所として10年ほど前からホームページを公開していました。当時は川柳のホームページといえばマスコミ川柳ばかりで、本格的な現代川柳を投句できる場所が全くなかったんです。
少しずつ現代川柳のサイトも増えてきていると思いますが、今でもマスコミ川柳のサイトの方が目立ちますものね。
WEB句会開始当初は、知っている人だけのサロン的なものでした。実際集まっての句会になかなか参加できない人もいるので、そういう方のために開始したんです。
遠方の方も参加できるというのはWEB句会の利点ですね。
WEB句会の開始から数年後にかもめ舎を立ち上げて、そのままスライドしてかもめ舎のホームページになったんです。
かもめ舎立ち上げよりWEB句会の方が先だったんですね。
そうです。で、ぽつぽつと相互リンクの申請があるじゃない?そういうのを受けているうちに投句が増えてきたんだけど、いわゆるサラリーマン川柳みたいな句が多くなったのよね。
顔を知らない人が増えてきたんですね。
そう。それで投句が増えてきたあたりから選を厳しくしたんです。投句数が250句で入選が10句未満の時もありました。そうするとサラリーマン川柳のような句はだんだんが減ってきました。

2 WEB句会の題と投句数

なるほど。次に題と投句数についてです。WEB句会では毎月1題2句までというのが一般的のようですが、かもめ舎WEB句会では2題各5句までとなっています。かなり特徴的だと思うのですが、この理由をお教えください。
そうねぇ。題は1題だと物足りないし、かといって3題以上にすると題を決めるのが大変なのよ。
わかります。毎月1題でも題を決めるのは悩みますからね。
今は五十音順で毎月の題を決めてます。
あ、そうなんですね。(かもめ舎のWEBサイトを確認)ほんとだ、今気付きました。
ら行とか候補が少ない時は困っちゃうけどね。
句数の方はいかがでしょうか?
各題5句というのは多いんだ?あんまり意識してなかったですね。まあ「5句まで」なので1句でも2句でもいいし、投句者の選択肢が多い方がいいかなと思って。
確かに1題2句まででも5句、10句と作りますし、投句者の選択肢が増えるのはいいですね。
でも上限は絶対に必要だと思う。特に賞金があるネット句会とかすごいのよ。
そうそう、「ちょい変え」な。1字だけ変えたりしてな。
そう!もう5句、10句なんてレベルじゃないもの。一人で100句以上の場合もあるんだから。
某百貨店の公募川柳に関わったことあるけど、一人から大量にハガキ来たりしてたもの。ハガキはコストかかるからある程度抑止されるだろうが、ネットはタダだもんなぁ。
ネットは時間さえあればいくらでも投句できるものね。
てにをは変え、中七変え・・・
そうなると選をするのが嫌になっちゃうから、上限は絶対必要だわ。
ネットは匿名性が高いから、それも「とにかく出しとけ」というのを助長してるよな。柳号もまともでないものも多いし。
もうテレビでずっと柳号はちゃんとしないとダメですよって言い続けてたんだけどね。まるで効果なし。サラリーマン川柳が広がりすぎてしまったんだな。柳号も含めてダジャレ、悪ふざけというのが定着してしまっている。
だからといって今伝統川柳をやっている人がネットに入っていけるかというと無理だよ。そもそも句会に若い人いないもの。10年以上前から手伝っている伝統川柳の会があるけど、僕らが未だに若手。新しい人が入ってこない。
このまま若い世代に「川柳=サラリーマン川柳」という意識が定着してしまうと伝統川柳は滅びるだろうね。
でも我々が今からネットを始めるというのはなかなかねぇ。始めるったって結構なハードウェア投資が必要になるしね。使えるかわからないものにはなかなか金をかけられない。
僕が番組を持っていた時の投句方法は、ハガキ、FAX、インターネットだったけど、FAXできないっていう方も結構あるんだよ。ネットはなおさらだよね。
そうなると、やはり私や私より下の世代の川柳に対する意識をどう変えていくかが重要ですね。

3 WEB句会の選

では、次の質問に。晶子さんは10年WEB句会の運営を続けられているわけですが、運営側から感じる良い点、悪い点はありますか?
10年続くってのはすごいね。
毎月やっているから、ある意味やめ時がないのよ。
でもさ、やっぱりネットで現代川柳をやれる場所があるってのを見つけたらうれしいんだよ、きっと。投句する人はさ。
私はネットから川柳を始めましたが、いろいろ探して晶子さんのサイトを見つけた時はうれしかったです。
選も良いしね。
普段の句会でも私は選が厳しいって言われてるけど、ネット句会だと顔が見えないからなおさらバッサリとやりやすいというのはあるかな。
他のWEB句会って互選のところもあるよね?個人的な意見としては、かもめ舎みたいに主宰が選をするのがいいと思うんだよね。
以前、昌善さんの「互選は病気を多数決で決めるようなもの」という発言を読んだことがあります。
あなた、あちこちでその話してるわね。
でも医者の世界ってそうなのでは。データに基づいてさ、複数の医者が意見を言い合って病名を決める。
みんなが医者ならいいんだよ、互選でも。八百屋さんとか銀行員とか、医者じゃない人が多いわけ。医者が一人もいないことすらある。投句者のばらつきによって入選の価値が毎回変わってしまうので、主宰がバチっと選をするのがいいと思うんだよな。
互選には互選の良さもあると思いますが、ずっと同じ選者というのは基準が明確ですね。
いろんなWEB句会があると思うけど、「この人!」という選者がいたら追っかけていくのがいいと思うな。
それから、かもめ舎のWEB句会では投句全体や特選句について毎月コメントしてるんだけど、そういうのを読みたいという人は多いみたい。
いま散文を書けない選者が増えているからね。その点晶子さんは元々は脚本家だから文章はしっかりしている。
選をした以上は、どこがダメでどこがよかったかは示すべきだと思うし、毎月のコメントは大事にしています。

4 川柳の触感

WEB句会経由でかもめ舎の会員になってくれたという人はいるの?
ゼロではないけど、多くはないわね。
それはどのWEB句会でも同じだと思います。やっぱりある種の怖さがあるんですかね?無料の怖さというか。例えば通販で無料お試しなんかやると、その後の買え買え攻撃がすごいですよね。
あるね!健康食品とかね。
一回買うとメールもかなりくるよな。あれ買えこれ買えいろんなメールがくる。
川柳のWEBサイトではそういうことはないと思うんですけどね・・・
インターネットは不特定多数に向けて発信して会員を増やすためのツールと考えている人が多いけど、そうではないと思うのよ。むしろ少数派の人が自分の居場所を見つけるツールだと思うの。
なるほど。
自分で検索して、「ここは私に合う」と思ったら気軽に投句できるわけだし。ただそういう方に実際に句会に入ってもらうとなると、さっきの通販の話じゃないけどネットからだと難しいので、会員を増やすという意味では地域の小さな川柳教室とか実際会う方が効果的だと思います。
ネット句会の投句者の中には、人同士の濃密な関わり合いというのを嫌っている人もいるんだろうね。これもある意味ネットの利点とも言えるか。
ただ私が個人的に思うのは、本当に川柳の実力をつけたいと思うのなら、ネットだけでは無理だということ。句会で実際に顔を合わせて、同じ条件のもとで作句して競い合うことは、ものすごく刺激的なのね。そこでは繕っている余裕はないから、自分をかなりさらけ出すわけ。そこが安全圏内にいてネットでだけやっているのと全然違う。自分の恥ずかしい姿を見せてしまうリスクを負っても得るものは大きいの。
ネットってやつは触感がないんだよなぁ。体温がないんだよ。句箋のざらざらとかさ、「入選した、よかったね〜」って女性とハグしたりとか・・・
ハグはよくわからないけど、触感がないというのはわかるわ。
俺もホームページや雑誌の川柳の選者とかやってるし、たくさん投句があってありがたいと思うよ。でも本当は触感が欲しいわけ。熱を感じたいんだよ。
小規模でも句会なら、参加者の熱を感じて、披講の時の歓声があって、やっかみがあって。
ネットだと披講も呼名もないですもんね。目の情報だけ。
ネットはとっつきやすいし、きっかけとしてはいいんだけど、句会に参加して是非触感や体温を味わっていただきたいね。
違う世代の人と直接触れ合うというのは、それだけで川柳に良い影響があるしね。
そうそう、映画とか音楽とか本とか、違う世界を歩んできた人間がお互いを語り合うというのはすごくいいと思うな。君は本は読むの?学生時代はどんな本読んでた?
僕は本はあんまり・・・。「ホビットの冒険」「指輪物語」とか「銀河英雄伝説」とかですね。
アイラ・レヴィンとか読んだことない?
ないですね。
ぜひ読んでほしいな。「This Perfect Day」とかさ。
フィリップ・K・ディックとか。
いいねぇ。クライブ・カッスラー、ロバート・B・パーカー。
ロバート・B・パーカー!「Early Autumn」ね。
いいよなぁ、あれは絶対読んでほしいな〜。
こういうのが大事なんだよね。自分にないものを他の世代から見たり聞いたりしたらさ、とりあえず触れてみてほしい。絶対川柳にも生きてくるから。

5 句の力

だいぶ話したね。最後になんかあるかい?
最後一点だけ。かもめ舎の会誌って横書きですよね?WEBもほとんどが横書きなのでこれだけは聞いておきたいと思って。
あー、横書きね。
WEBだと縦書きで綺麗に見せるには全部画像にするとか手間がかかりますが、川柳雑誌で横書きは珍しいなと思いまして。
若い人たちを取り込むことも意識していたので、縦組みより軽い感じかなと。インターネット情報はほぼ横組みだし、多分、あまり違和感はないだろうと思っていました。それに川柳は短詩文芸だからセンテンスが長くだらだら続かないということもあって、実際やってみたら意外と読みやすいのよね。
うちの句会に参加している若手のノートを見ると、みんな横書きなんだよね。
投句も横書きだから最初は抵抗がある人も多かったけど、やっていくうちにみんな慣れたみたい。
やっぱり後発の柳社だから、何か特徴があったほうが良いかなと。かもめ舎が初めてというわけではないみたいだけど、横書きで長く続いているところは少ないようですね。
縦書き、横書き、ネット、雑誌、いろんな形があるんだろうけど結局は句だよな。
そうそう。掲載されてる句に力があれば、どんな形式でも読み手を納得させられるからね。
形式にとらわれずに、いろんな場所に出向いて川柳に接して欲しいと思います。
本日は貴重なお話ありがとうございました。
よし、もう一軒行くか?
行きまーす!
高いぞ。
・・・帰ります。

まとめ

記事にしていない部分でもいろいろなお話を伺いました。二軒目のバーで横浜の夜景を見ながら聞いた、脚本家時代の話、時実新子さんとの出会い、新子さんの選の話など、川柳の熱、かもめ舎の熱を感じられる良い機会となりました。本サイトでも川柳の熱を感じられるような、いろいろな取り組みを行いたいと思います。

次回は、互選でWEB句会を実施されている「現代川柳ゆうゆう夢工房」さまにお話を伺います。お楽しみに!

「座談会:川柳とインターネット2」への2件のフィードバック

  1. 森山文切様

    「座談会」拝読致しました。たいへん読み応えのある内容で、繰り返し読ませて頂いております。私のような海外居住者には、日頃、国内の句会等に参加することがありませんので、この「座談会」で先生方の生の声を直接お聞きしたように思います。『本当に川柳の実力をつけたいと思うのなら、ネットだけでは無理』とのお言葉が胸に突き刺さりました。しかし、海外に居りますと句会でもまれる機会もなく、WEB句会が唯一の参加手段です。WEB句会を管理運営するためのに、計り知れないご尽力をされていることは重々承知し、感謝をしております。それにお答えできるように、投句者として体温を伝え、触感を伝えられるように努力したいと思います。
    拙いコメントになりましたが、感謝の念を込めてお礼申し上げます。
                 カナダ・バンクーバー 福村まこと

    1. 福村まことさま

      コメントありがとうございます。またいつもご投句いただき嬉しく思います。他の句会でもよくお名前を拝見しております。

      WEBでも熱を感じられる手法として、チャットや配信を利用した句会や勉強会を実施できないかと考えています。ネットでは無理というのは、「現状の」川柳サイトでは無理というだけで、熱を伝える技術は既にあると考えています。あとは技術を利用できる人材か、技術を買える金が必要です。金はないので私が勉強して熱を伝えられる技術を提供できるようになるのが一番の近道かもしれないというのが辛いところですが、ぼちぼち頑張ります。

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