座談会:川柳とインターネット1

「川柳とインターネット」というテーマで、川柳塔社理事長新家完司氏と、鳥取県川柳作家協会会長森山盛桜氏にお話を伺いました。

日付:平成27年12月28日
場所:千年の宴 倉吉南口駅前店

 新家完司
川柳塔社理事長
大山滝句座世話人代表
 森山盛桜
鳥取県川柳作家協会会長
川柳塔鹿野みか月会長
 聞き手:森山文切
川柳塔おきなわ準備室
管理人

1 インターネットの川柳における利点

 本日は「川柳とインターネット」というテーマでお話を伺います。お二人はインターネットが普及する以前から川柳をされているわけですが、インターネットが普及する前と今との違いをお教えください。
 大きくふたつあるかなぁ。ひとつめはいろんな人と知り合いになれるようになったことやな。わしも盛桜さんもブログをやっているけれども、ブログを通じて遠くの人やそれまで交流が少なかった若い人とも仲良うなれたりね。距離や年齢を感じさせないというのが利点と思うわ。
私も今沖縄に住んでいるので、遠方からでもいろんな方と交流できるのはすごく有り難いです。
 あと昔は結社ごとで固まってるようなとこがあったけれども、その垣根が取り払われてきているというんかな。そういう流れはネットが普及する前からあったけど、ネットによって加速した部分はあるやろうね。
確かに昔より結社の意識は薄れているように思いますね。
もうひとつ、一番感じたのは外出しにくい方や体が悪い方が投句しやすくなったこと。わしの句会にリュウマチで入院された会員がおられて、字も書けんような状態やったけど、キーボードは打てる。その方はメールを覚えて亡くなる直前までメールで投句されていた。
それは感じますね。昔は手書きして投句するしか選択肢がなかったですから。
その方は息子さんに勧められてネットを始められたらしい。入院しながらも外との交流をということでね。投句だけではなくてある程度は川柳の情報も得られるし、いろんなことの距離が縮まったゆうんはインターネットの大きな利点やろうなぁ。

2 インターネットが向いていないこと

逆に悪い点などはあるでしょうか?
うーん、わしが感じるのは深い議論がやりづらいということやな。
といいますと?
例えば、ある句に対して表面的に賛成、反対いうんはええんやけど、突っ込んだ話をしはじめるとニュアンスが伝わらへんやん。
文字だけでは難しいですよね。
こうやって顔を合わせて話せば、冗談で言ってるとかツッコミを入れてるとかわかるやろ。文字だけだとどうしてもキツく取られるのよなぁ。
そうですね。どうしても口語に比べて硬い表現になりますしねぇ。あと発言が後々まで残りますからね。
 せやな。口だと「おまえこういっとったやろ」「いや、いうてん」みたいな逃げ場があるけど、ネットだと残るから無難になりやすいな。
 そうですか。川柳塔おきなわ準備室にも、忌憚なく意見を言い合えるような場を設けたいと思っているのですが・・・。
じゃあ、そのような場所を作ったとして、例えばわしがある句に対して「この句は○○で××やから、句意は△△や!」みたいに発言したら、それに対してあんた忌憚なく意見を言える思う?
う・・・。確かにかなり気を遣いそうです。「おっしゃるとおり!」で終わったりして・・・。
せやろ。さっき言ったとおり会って話せば細かいニュアンスも伝わるので議論になるけど、文字だけじゃなぁ。広く浅くというのであればネットは向いとると思うけど。
川柳の議論のための掲示板はいくつかありますが、句会で顔を合わせる人同士の掲示板が多いですね。句会の議論の延長というか・・・。
 よう知っとるもん同士で議論するんなら問題ないかもな。
現状はインターネットというツールがこの点の需要に追いついていないのかも知れませんね。わたしたちが使いこなせていないという面もあるとは思いますが。
これからもっとネットの世界が広がっていくんやろうし、川柳が乗り遅れんようにあんたらの世代ががんばってもらわな困るで。
がんばります。

3 インターネットと川柳の地域性

 遠方からでも投句できるなど距離の縮まりがネットの利点というお話がありましたが、逆にその縮まりによって川柳の地域性が損なわれるという意見があるようです。これについてはいかがですか?
それはあるやろな。
 えっ、そうですか?各地の柳誌をみると地域性がかなりあると感じるのですが・・・。
まあ近々にということではないけれども。現在も川柳の地域性というのは色濃く残っとるね。
 大会でも不思議なもので、他所から選者を招いても、地域性のある句というか、その会の色が反映された選句になりますよね。
 現状では地域性がなくなってきているという実感はないが、ネット句会などを通じて違う地域の句に触れる機会は確実に増えているし、将来的には地域性が薄れて行くことは十分考えられるわな。どのくらい時間がかかるかわからんけども。
 それは川柳界としては歓迎すべきことなんでしょうか?
 うーん、どうかな。でも川柳が画一的になったらおもろないよな。しかし、仮に地域性がなくなったとしても最終的には個人の性格よな。真面目な句が好きな人は真面目な句を作るし、軽い句が好きな人は軽い句を作る。
 結局は選者によるところもあるが、将来的に地域性がなくなったとしても、川柳が画一的になるということにはならないと思うなぁ。
盛桜さん、そうそう、選者な。普段軽い句を作っとっても、大会の選者になったらええ格好してまうというかな。どうしても格調の高い句とかさ、格言臭い句を選んでまうというのは問題やね。
確かにそういう選者もありますよね。
そういう傾向が増えてくると川柳が画一的になってまうし、勇気を持って自分がええと思う句をバァーンと天にできるかやろなぁ。
難しいところですよね。選者になるというのはある意味大会を背負うことでもありますしね。どうしても下手をできないという意識が働きますよ。特にあまり選者をしたことがないような人にとっては。
そうやなあ。身内から選者を立てる場合は特に気を付けんとね。育てたいという気持ちはわかるんやけど、地域の句会でよう経験してもらって、「この人は大丈夫!」いうもんを選者にせなな。遠くから参加してくれとる人もおるわけやから。
店員さん 失礼しまーす。追加の熱燗お持ちしました!
お、ありがとう。文切さん、結構話したしもうええやろ。飲も飲も。

4 インターネットによる新規会員獲得

 あ、えっと、最後にもう一点。インターネットが普及してきて、句会や大会の参加者が増えたというようなことはあるんですかね?
 どうやろな・・・。そういえばこの前大会でえらい若いのと隣の席やったな。いろいろ話して仲良うなったんやけど、どこかの句会に所属しとる感じでもなかったし、まさにネット関係とちゃうんかな。
 あんまりないかと思っていたのですが、実際にあるんですね。
 そないに多くはないやろうけど。あと句会、結社に所属する、同人になるいうんは昔はステータスだったけど、今はネットの影響もあるんかその意識はだいぶ薄れてきたよね。
 それはひしひしと感じます。
 あとはネットによって、企業川柳、マスコミ川柳がガッと広まったわな。川柳人口が減ったと言われとるけども、決してそんなことはない。川柳人口やのうて、結社に属する人間が減っとるんや。
 そもそも「結社」というものが頭にないんですよね。そういうものがあるということが認識されてない。
 そやよなぁ。それにチラシなんかで誘っても、年会費なんぼ、誌代なんぼみたいな話になると、「ネットでやったらタダやん」となるし。
 そうですよねぇ。
 中には柳誌を見せて説明したら興味もって結社に入ってくれる人もおるけども、若くなるほど「結社興味ないです」という人は増えてくるよな。若い人も金払ってでも入りたくなるような魅力ある結社にせな。
ただ結社が魅力的になっても、やっぱり先ほど言われたとおりまずは存在に気が付いてもらわなければどうにもならないと思うんですよね。
まあ、そうだわな。
例えば「川柳」とネットで検索すると、表示されるのはほとんど企業川柳、マスコミ川柳で、興味本位で「川柳」と検索した人がどこかしらの結社のサイトに辿り着くのは難しいんですよね。
そうやな。
なので現状なにげなく「川柳」と検索した人に結社のサイトをみてもらうには、広告を打ちまくって広告欄に表示させるしかないと思うんですよね。相当な費用になりますけど。
そら無理やろ。
そうなんです。だからもう少しターゲットを絞る必要があります。例えば「川柳 沖縄」で検索すると、川柳塔おきなわ準備室は5番目あたりに表示されるので、これなら初めての人でも辿り着けます。
確かに検索結果の1ページ目に表示されるなら見る人は多いかもな。
チラシや新聞の川柳欄をみたり、実際に会って話したりといった、「なんとなく川柳と検索する」よりもう少し踏み込んだ興味をもって検索した人なら結社のホームページに辿り着けると思うので、そういう人が結社の句を見て、見学しようとか連絡してみようとか思えるようにしておかないといけないと思います。
 そうそう。興味が薄い人を取り込むのは難しいと思うので、まずはある程度興味がある人に絞って結社のホームページを作った方がいいかもしれないですね。
店員さん 失礼しまーす。熱燗2本追加でーす。
もうええな。飲むでぇ〜
飲みましょう!お話ありがとうございました。

ぐびぐび
(よう飲むこと・・・)

まとめ

管理人の想像より、インターネットの川柳に与える影響は大きなもののようでした。今後さらに影響は大きくなると思われるので、ネット上でのつながりと、実際に会っての交流とを上手くリンクさせて両方の利点を引き出せるような体制作りが必要との思いを強くしました。

(右は実際に会っての交流の一例)

 

「座談会:川柳とインターネット1」への2件のフィードバック

  1. こんにちは。
    自称「鈴鹿川柳会のアイドル」橋倉久美子です。
    いつもインターネット句会にご投句くださり、ありがとうございます。
    おもしろいコーナーで、興味深く読みました。気のついたことをいくつか書きます。

    ご存知かと思いますが、鈴鹿川柳会のHPには、「言いたい放題」なるコーナーがあります。
    HPの管理者である吉崎柳歩さんは、最初ここを「自由鑑賞室」と名付け、文切さんがおっしゃるような「忌憚なく意見を言い合えるような場」にしたいと考えていたようです。ただ、あまりに硬い名前で訪問しづらかったためか、現在の名前に落ち着いています。
    ネット句会の句評など、柳歩さんは積極的に書き込んでいますし、私も選者の時は毎月書くようにしていました。
    ただ、議論となると、完司さんがおっしゃるようにやはり難しい部分もありますね。これは「ネット上への書き込み」自体の宿命かもしれません。

    鈴鹿川柳会では、ネット句会から誌友になってくださる方が少数ですがいらっしゃいます。
    また、川柳に興味を持ってネット検索をしていたら、鈴鹿のHPを見つけ、地元にも結社があるんだと知って入会された方もいます。
    自分自身を振り返ってみると、川柳の結社というものが世の中にあるのは知っていたけど、どうすれば連絡が取れるのかよくわかりませんでした。10年以上前のことなので、今ほどネットも普及していなかったし……。だから今なら、きっと検索したでしょうね。
    ただ、ネットからの入会者にそれほど期待しすぎてはいけないと思います。
    現在のネット句会の参加者は、ネットだけで楽しんでいる人か、もともと川柳をしている人がネットにも投句場所を広げている場合が多いのではないでしょうか。
    ネットだけで楽しんでいる人(まさに無料で川柳を楽しんでいる人)に、お金を払ってでも参加したいと思わせるにはどうしたらいいか? この辺りが課題でしょうか。

    1. 橋倉久美子さま

      コメントありがとうございます。

      ネットでの書き込みは難しいですね。
      私が参加している「ゆうゆう夢工房」というサイトには「とことん句会」というものがあり、毎月参加者が1句提出し、相互に意見を言い合うようになっています。最初10日間ほどは作者名を伏せたまま議論をするのが特徴的で、試行錯誤の結果この形に落ち着いたと聞いています。逆に言うと、そうしなければ意見が出てこないというのがネットでの議論の現状とも言えます。

      新規会員については、ネットに限らず句の力が重要だと思います。「こんな句あるんだ、すげー」と思わせる句を、ひとりひとりに提供できるかどうかと考えています。そのような句がたくさん結社にあれば、見学したい、入りたいという人も増えてくると思っています。
      ですので、結社のホームページでは普段の活動でどんな句が生まれているか、アクセスしやすい形で提供することが大切だと思います。

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