選評:20万アクセス記念句会

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20万アクセス記念句会の選評を、選者の月波与生氏と森山文切の対談形式で行いました。

川柳の上達には議論が重要ですが、web句会には議論が足りないと思っています。しかし、入選句を批評することは選や作者への不満と受け取られる可能性もあるため、深い議論は難しいのが現状です。

そこで今回、選者の対談という形での選評を企画しました。選者同士が入選理由と没の理由を語ることで、本サイトをご覧の方々の議論、感想の表明や、表に出なくても自分の中で考えるきっかけにしていただけたらと実施するものです。

本ページの下部にコメント欄がありますので、企画の是非も含め、ご意見ご感想いただけたら幸いです。

対談実施日:平成29年7月21日
実 施 方 法  :スマホアプリ LINE による。

月波与生
おかじょうき川柳社所属
ブログはこちらから
森山文切
川柳塔おきなわ準備室管理人

1 投句全体について

LINEでの選評は初めてでどうなるかわかりませんが、よろしくお願いします。さっそくですが、没句も含めた145句の全体の印象をお願いします。
雑詠だったので難しかったのではないでしょうか。普段ぼくと句会をやってる人は出しやすかったと思いますが(笑)
難しかったというのは、考えすぎの句が多かったということでしょうか?
考えすぎというか、普段あまり川柳では見かけない言葉の川柳が多かったと思います。今回の選はあまり川柳になじまない言葉や、挑戦的な表現をしているような川柳と、川柳味のある川柳らしい川柳バランスよくいただいたつもりです。
web句会の特徴として、普段大会や句会に参加されていない層の割合が増えますので、そういう意味では見かけない言葉は多くなるかもしれないですね。

2 両選者が入選とした句

ではさっそく1句めお願いします。

父の日に田口トモロヲプレゼント
田口トモロヲは、インパクトのある名前のわりに、とっさに顔を思い出せないところがいい。それでいてかっこいい。田口トモロヲのようになれとプレゼントされる父も大変。固有名詞も名詞が強すぎると川柳が負けてしまいますが、田口トモロヲはいい線を狙ったと思います。
私の第一印象は田口トモロヲが動くかもでしたが、この点はいかがですか?イッセー尾形、モロ師岡、六角精児あたりはどうでしょう?
トモロヲのヲ、がいいんですね。読み手がきょとんとなる。
私もそれが決め手でした。「を」を想起させるし、プレゼントへのカタカナの流れもいいし。
なかはられいこさんの句で
「魚の腹ゆびで裂くとき岸田森」
ってのがあって、この岸田森と田口トモロヲは近い。ぼんやりしていて、調べるとキャラが立ってる人。父にそうなれ、とリクエストしてるわけで、なかなか父も辛いなあ、と。文切さんも父ですがそのあたりはどう読みました?
意味から読むと「父さんは田口トモロヲみたいだよ、いつもありがとう」的な読みもできるかなと。
なるほど。それはいい人の読みですね(笑)
どちらの読みも面白いと思います。
自分は少し悪意を感じてしまいました。悪意があるから川柳です。
自分は田口トモロヲには悪役的なところより、優しい感じの役の印象がありました。でも言われてみたら悪役もやってたような気もします。
ぼくは、ヲ、に悪意を感じます(笑)
確かに。悪意ある(笑)そろそろ次に。

フィヨルドのとろける様な人嫌い
ノルウェー語、氷河による浸食作用によって形成された複雑な地形の湾・入り江、だそうです。大人の付き合い方として「愛想のいい人嫌い」がありますが、寒い国でゆっくり侵食されているフィヨルドを、人嫌いに例えたのはいい。フィヨルドをイメージさせたらもう成功の句ですね。
「フィヨルド=とろけるものの最上級」みたいな印象を持ちました。
そうですね。
「日和るど」みたいな日本語に近い響きも影響があるでしょうか?考えすぎ?
それは気が付きませんでした。
考えすぎか(笑)どんどん行きますか。

滑り台まだ人間を降りられぬ

正直、私の第一印象は「どっかで見たことあるような・・・」でした。

既視感がありました?
ありました。探したけど見つからなかったのでいただきました。「降りられぬ」なので、「わたし」は滑り台の上にいます。滑り台はすごい勢いで降りていくし、「わたし」はそのことを知っています。
わたしが滑る人か、滑り台かで読みが変わりますね。
そう思います。
滑り台に立っている人間と読めますが、滑り台が自分とも読めます。面白いのは後者で、他人を滑り台を滑らせるように楽しませてきた私。みんなを楽しませる私は、いい人に思われているが、じつは人を転落させているのではないか。そんな自分は人間でいいのだろうか、という贖罪の句として読みました。
なるほど。
人を落とす人、っていますねえ。
怖い読みをすれば、人間を降ろすことを楽しんでいるとも読めますね。
そうそう。ニコニコ笑って。
怖い読みの方が好きだなあ。
悪意を探してるかも(笑)
川柳人の悪いくせ(笑)次行きましょう。

書き足して私を逃すあみだくじ
これは川柳味のある句としていただきました。当てるためのあみだくじではなく、逃げるためだというところがユニーク。子供のころの、選んだあと線を一本追加できるというルールを、思い出しました。
あみだくじに書き足すという想は見たことがあるような気がしましたが、その理由がわたしを逃がすためというのはわたしもユニークと思いました。
あみだくじの川柳は多いのですが、くじのことを書くんですよね、当たる、とか。この句はそうではなくて、道としてあみだくじを使ったところがいいと思いました。
この句は確かに「くじ」としてではないですね。書き足したの横棒ですよね?縦棒?
あみだくじで自分が選んだ後に横棒を一本足しませんか?
普通は横棒なんですが、縦棒足したらそのまますぐ逃げられそうな気がして(笑)

(笑)

そういえば、「ワープ」という線もありました。ヤマトでない、つーの。
あったあった!曲がったやつ。どの線か限定されていないので、いろいろと想像できますね。
ですね。
線かどうかも限定されていない。
作者もあみだくじでワープした世代かもしれません。
そうかもしれませんね。いろんな逃げ方を知っている世代かも。では片方が没とした句に移らせてください。

3 片方の選者のみ入選とした句

、しか見えないけれど私です
片方入選の句は、没にした方から理由をいいましょうか。
わたしが「、」しか見ることができないとも読めますが「、=わたし」と読みました。「、=わたし」なら、当然「、」は1個なので大きな紙に「、」が1個あるのを想像しました。このようなイメージの、現実起こりうる状況がいまいちイメージできなかったので没にしました。面白い表現だとは思いました。
ではぼくの読みを。天位の句ですから敬意を込めて。
とうてん。句点だと上5におさまるのにわざわざ6音のとうてんとしたのはなぜだろうか。「。」だとまだ存在感がありすぎるのだろう。「、」でさらに存在感を消した。読点と書かず、「、」としたのもいい。「、」だと文章でみると読点ですが、絵だとゴキブリかもしれないし、ゴミかもしれない。なんにせよ、取るに足らないもの、というアイコンとして「、」と書いたと思いました。
なるほど。
で、後半で力強く、それがわたしといっている。点とか蟻とかの句は自虐になりやすいですが、力強く言い切っているところがいいと思いました。
絵やゴキブリも含めるとすると音読する場合は「とうてん」ではなく「てん」になるんですかね。「とうてん」と読むと読点に限定されてしまう気が。
なんて読むんですかね(笑)ぼくは、とうてん、と読んでしまいましたが。
わたしもとうてんと読みました。わたしは絵やゴキブリまで思いが至らなかったので、読点が1個だけあるという状況のリアリティが気になってしまいました。
限定されないように「、」にしたのかもしれませんね。披講できない(笑)
確かに披講には向いてないですね(笑)しれっと「とうてん」と読んで、発表誌でびっくりしてもらいましょう。

次です。

カロリーが何さと心地よい疲れ

没にした方からお願いします。

「心地よい疲れ」が、ちょっと常套に感じられました。コマーシャルにありそうな言葉というか。カロリーなんか気にしないで一生懸命生きればカロリーも減ってぐっすり眠れる、というように読みました。
わたしも最初の選では平凡かなーと思っていたのですが、表現のストレートさに惹かれていつの間にか一番になってました。心地よい疲れもカロリーが何さと組み合わさっていい味出してると思います。ウォーキングの目標消費カロリーに届くまでにやめたけど、ちゃんと疲れてるぞみたいな負け惜しみをイメージしました。
健康的な川柳だと思います。
じゃあ次に。

グレゴリオ聖歌をねじり鉢巻きに

わたしからですね。こういう川柳では、どちらかが具象でどちらかが暗喩だと(勝手に)思っているのですが、どっちも具象がイメージできなくて、具象がないので現実の状況がピンときませんでした。作句者としては別ですが、選者としては現実の状況とのイメージのリンクを意識しています。

酔っ払って作ったのかもしれませんね。
ありうる(笑)行きつけのスナックで。
カラオケでグレゴリオ聖歌(笑)
それはさておき、「敬虔なクリスチャン」という言葉にプレッシャーを感じているクリスチャンもいると思うんです。ねじり鉢巻のクリスチャンで開放感のある句になりました。何をやっても笑い話になる、ていう人は得な人だと思います。
敬虔なクリスチャンの象徴=グレゴリオ聖歌で、クリスチャンの開放感=ねじり鉢巻ですか。この読みの場合は最後が「で」の方が合いませんか?
うーん、どうだろう。
単純に読むと、グレゴリオ聖歌を歌って頑張ってるぞ、ということかと。ただ感覚的にそうじゃないとは思いますので、いろいろ試行錯誤したのですが、句が示すところにたどり着けませんでした。
グレゴリオ聖歌とねじり鉢巻で二物衝突なんですよ。
そう思います。意味を考えちゃいけない句なんですかねぇ。ただわたしはまだ選者としては意味からは離れられないです。

次。

友達に戻りイカスミスパゲッティ

お願いします。

青森県のむつ市がイカスミスパゲティの発祥地だと思います。
初耳です。
真っ黒なイカスミスパゲッティを食べると口の中も真っ黒になる。友達に戻るなら、口の中真っ黒でもかまわない?ぼくなら前の恋人でも汚れるところをみせるのも、見るのもいやだなあ。文切さんは恋人から友達に戻ったことあります?ぼくはないですね。馬鹿にすんな、って感じで(笑)
僕はあります。たぶんイカスミスパゲッティ一緒に食べられます。
へー、今日いちばんのびっくり。
恋人の時はできなかったことを、友達に戻ってできる、あるいは恋人であることのプレッシャーからの解放を、イカスミスパゲッティという具象で表現したと捉えました。
恋人から友達に戻ったことがない人からいうと、別れて失敗した、と思われたいから、結構無駄な努力をするじゃないですか。だから、イカスミスパゲティなんてハイリスクなものは、元彼女の前では食べない。
月波与生の熱い恋バナ(笑)
次いきますか(笑)
えー、もっと聞きたい。
選評対談でしょ?次、次(笑)
じゃあ、最後の句です。

蛍火の無無明亦無無明盡

蛍火と無無明亦無無明盡が近いと判断して没にしました。迷いはないし、迷いが尽きることもないということと、蛍火がついたり消えたりはイメージが近いと思いました。

無無明亦無無明盡、むむみょうやくむむみょうじん。調べました(笑) 般若心経の一節。無名=迷い。ざっくりいうと、迷いは無いし、迷いが尽きることもない。ということらしいです。悟りです。並のにんげんにはわかりません。「むむみょうやくむむみょうじん」を川柳にしたのははじめてみました。無無明亦無無明盡と全部書くと重すぎるので、無無明亦、無無明盡のどちらか半分でも句意は伝わると思いました。
そうですね。読み込むにはちょっと長い印象です。
むさしさんの
「めくらぶどうひとつぶずつのぎゃーていぎゃーてい」
という句を思い出しました。むさしさんの方は般若心経を句に入れながら、羯諦羯諦、とは書かずに全部ひらかなで表現しています。無無明亦無無明盡は漢字とひらかな、どちらが伝わるでしょうか?
蛍火なら明が効くので漢字が合うと思います。
「ほたるびのむむみょうやくむむみょうじん 」
ムムッと明神でサッカーしか思い浮かばない(笑)
半分でも句意は伝わりますね。川柳としては無無明亦無無明盡、まで書くと言い過ぎかもしれません。17音なんですよ。
確かに。音字数が食われすぎと思います。残すなら無無明盡ですかね。その道の人からすると、どちらか一方では意味をなさないのかもしれませんが。
ただ、辞書を引かないとわからない単語もどうか、とは思います。面白いですけどね。わからない川柳になる。
そうですね。面白いですが、川柳は面白い具象を見つけるゲームではないと思うので、許容範囲の見極めが難しいです。
グレゴリオ聖歌とかね。
そうそう、判断が難しいです。

4 まとめ

最後に、今回の対談形式による選評の感想をお願いします。
どうなんでしょうか。読んだ人が面白ければ成功ですが、イカスミスパゲティのくだり以外はつまらないかも(笑)
ではイカスミスパゲッティがメインということで(笑)
真実はそこにあったということで(笑)川柳のはなししてませんけど。
次回の特別企画の案ができました。
何でしょう?
特別対談「川柳人の恋愛事情 〜恋のイカスミスパゲッティ〜」!
(笑)
与生さんの元カノも呼ぼう(笑)
や・め・な・さ・い(苦笑)

「選評:20万アクセス記念句会」への4件のフィードバック

  1. 作者のユニークな発想や感性に、選者の対談という選評へ なるほどなあ・・・と楽しみました。
    長年続けているスイミングの後 すうーと出来た実感句でした。
     奥深い川柳へこれからも心の言葉を大切にと大変励みになりました。有難うございました。

    1. コメントありがとうございます。
      今後もいろいろな企画を行いたいと思います。引き続きよろしくお願い致します。

  2. 文切さん、与生さん、ご無沙汰しています。
    おふたりの選評を楽しみにしておりました。
    特に「、しか見えないけれど私です」はとても気になる作品でしたので、興味深く読ませていただきました。
    それにしてもまさか恋バナまで飛び出すとは…(笑)もっと読みたいです(笑)

    1. コメントありがとうございます。
      恋愛の句にフォーカスした座談会、ありかもしれませんね。考えてみます。

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